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『説得とヤル気の科学』を読んで、やる気について考える

はじめに

 もともと、自分の根っこは怠惰であり、休日になっては「やる気がしないな」とか言いながら、家でゴロゴロしたりするのが常態化していたりする。なので、何かやる気を出すためのヒントとして、本書を読んだりしていた。

 実際、この文章も、昨日くらいに「もうそろそろ何かエントリの一つでもあげようかな」と思って書こうとしたところ、一文も文章が進まなかったという諸事情もあるので、本読んでなんにも身についてねえじゃねえか、ということにもなりかねないので、ちゃんと記録に残しておこうと思った次第。

本書について

 この本の名前が『説得とヤル気の科学』と書いてあるとおり、そもそも本人(=本を読んでいる人)が「やる気を出す」という側面だけではなく、マネージャーの人が、以下に自分たちがマネージしているメンバーに対して、如何にやる気を持ってやってもらうか。そしてそれを通じて如何に話を通すか、といった側面も含まれている。

 なので、今回書く記事は、あくまでも「自分がやる気を出す」という側面だけを取り上げる感じになっているが、もし「他のメンバーを如何にしてやる気を出すか」といったような側面について興味ある人は別途、本書を買ったほうが良いと思う。なかなか、ためになることが多い。

やる気を出す七つの方法について

 まず、本書で想定されているやる気の出し方は、以下の7つが想定されている。

  • 帰属意識
  • 習慣
  • 物語の力
  • アメとムチ
  • 本能
  • 熟達願望
  • 心の錯覚

帰属意識の章

 本書にある自邸によれば、誕生日が一緒であるような、わずかな繋がりであっても、目標や、やる気、感情を共有しがちだと言われている。どうもポイントは類似性のようで、人間は似ていると感じる相手や、似たような経歴や、価値観の持ち主を好ましく思う傾向があるという。

 少し脱線するけれど、この話を読みながら思ったのは、よく尊敬したい人になりたければ、その尊敬する人の真似をしなさい、というものだと思う。よく言われるように、「学び」という文字が、そもそも「真似び」という、いわば「真似」というところから来ている、という話もあるくらいで、似ているものが集まったり、あるいは、こちらから似せていこうとするのは、こういったやる気や感情、目標をうまくコントロールできる側面がある。

 逆に、これは説得術でも有効である。例えば、相手に親近感を持たせたければ、相手の身振りをよく見て模倣してあげるとよい。この当たりのことに関しては、この記事の範疇には外れるけれど、いろいろと参考になることも多い。例えば「よく笑うと、親近感を増す」とか、その当たりである。

習慣の章

 俺は習慣づけることが苦手である。確かにこの文章はポモドーロテクニックを使って書かれており、紙の日記などもつけていて、ある程度の習慣化には成功しているようにも見えるのだけれど、油断すると、すぐにサボったりしがちになる。

 本書によると、習慣形成を促すためには、目標の行動を小さな段階に分け(ストラテジー24)、過程をできるだけ簡略化すと同時に「ルーチンを始めるか否か」の決断以外は「意思決定不要」の状態にし、あとの段階はどれもできるかぎり自動化する(ストラテジー25)。その範囲で、結果や進捗状況をちゃんと見る(ストラテジー26)。ということが有効だとしている。

 ちなみに本書では、既存のルーチンに対して、フックを作ることによって、習慣化する方法を教えている。例えば、本書の場合だと、メールチェックをしたあと、「その日に実行したいことの中で特に重要なものを3つ書き出す」ということをフックすることにより、習慣化することに成功した、と書いてある。

物語の力の章

 人には、必ずしも「こういう人間である」という、外側に向けた顔が存在している。このことを「ペルソナ」と呼ぶ。例えば、自分の場合だったら、こういう文章を書くことによって、「知的でかつ、豊かな教養を持つ人間である」というペルソナを着ていることになるだろうし、あるいは「誰にでも優しく慣用的に振る舞うことができる」というペルソナであったりする。

 もちろん、このペルソナに沿って相手に説得させたり、あるいはペルソナをちょっとずつ変化させることで、自分たちの望ましいペルソナへと作り上げる(例えば、本書だと如何にしてWindows派からMac派になったのかという事例が載っている!)

 ちなみに、ペルソナの変え方の一つとして、相手に対して現在のペルソナと一致しない小さな行動を一つとらせる、というのがあるが、これはたぶん、自分の行動を変える上でも大切で、確か何かの本でも書いてあったけど、自分の性格を変えるのには、自分が絶対やらないだろうことをやってみるということも大切である、ということが書いてあったような気がする。

 ペルソナとは、いわゆるその人の「こういうように振る舞いたい」というストーリーの集積という意味でも、このようなストーリー的な側面は重要なのだろうと思う。

アメとムチの章

 この章で「なるほどな」と思ったエピソードがひとつある。それは、スタンプカードの実験である。

 この実験では、2つのカードを用意する。一つのカードは、スタンプを押す欄が10個ある。もう一つのカードは、スタンプを押す欄が12個あり、既にスタンプが2つ押されている。

 この実験のミソは、論理的に考えれば、両方共10個スタンプを押さなければいけないことになるのだが、しかし、どちらのカードをもらったかによって、スタンプを早く集めるかが違ってくる。この場合、コーヒー屋のスタンプなのだが、明らかに「既にスタンプが2つ押されている」ほうが、スタンプが早く集まる率が高かったという。

 どうも、この実験は元があって、実験用のネズミが出口に近づくほど走るのが早くなることを利用しているようで、つまり「目的達成までに残されているものはなにか」という側面で動機づけされやすいということらしい。

熟達願望の章

 本書の中で特に面白いのは、熟達願望の章であると思う。

 例えば、エンジニアの待遇は、往々にして議論になることが多い。もちろん、給与を沢山支払ってもらい 、高い椅子で悠々自適にコードを書くことも、大切な要素の一つかもしれない。

 このあたりについて、紹介している実験が参考になる。その実験の概要は以下の通りだ:

 教室に、子どもたちには「これから絵を描きなさい」などの指示を行わず、ただ絵の道具を置いた。ただ、「絵を描くと『よく描けたで賞』がもらえるよ」と尋ねたグループ、そのようなことを言わずに絵を描いた子に対して『よく描けたで賞』を与えたグループ、最後はとくにそのような賞を与えないグループ、という三つに分けた。さて、どのグループが一番絵を描いたか。

 一瞬、推測として「子どもたちは賞を貰えると思うから、予め『よく描けたで賞』を伝えられた子どもたちが熱心に描くだろう」と考えるかもしれない。しかし、実際には、予め『よく描けたで賞』を伝えられた子どもたちが、絵を描いた時間がもっとも短くなったという結果が出ている。

 変な話なのだけれど、逆に報酬があるから「こそ」、その活動に対してのやる気がでないという場合もあるということがあるらしい。本書では、「専門的な仕事や、新しい技術や知識の習得が必要な仕事をさせたい場合は、熟達願望を利用する」と書いてあるが、おそらくプログラマ・エンジニア系だと、この辺りの章が一番面白い部分かもしれない。

まとめ

 本書の面白いところは、このような「個々のやる気をどうやって保ちつづけるか」といった主題の他に、「チームとしてやる気を高めるのにはどうしたらいいのか」といったマネージメントの部分、また人々はどういうところに「説得力を感じて商品を購入したりするのか」というマーケティング的な側面があり、楽しい読書ができた。上の文章で、何か引っかかる内容があったら、ぜひ買ってみるといいかもしれない。

説得とヤル気の科学 ―最新心理学研究が解き明かす「その気にさせる」メカニズム

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